マニュアルに<主婦にもできる>といたわられ<にも>の淵より主婦蹶起せよ  島田修三

ネット内を探索していて、唐突にこの歌とぶつかってしまった
島田修三は、短歌雑誌などで写真を見かけるだけである。端正な面持ちの方と、印象がある。万葉学者としても、有名である。

騙し絵の咲き乱れたる地下街に降り立つ俺の騙されむとす
ビーバップ聴きつつ夕べ淋しもよどこにもあらざる祖父のニッポン

これらの歌から派生するイメージがあった
ラジカルなというかアイロニカルな立場から詠っていることも知ってはいたが、まさか「蹶起せよ」といわれようとは。
確か島田は、1983年を境にトーンが一変したと読んだことがある。「神経質でスクエアな少女が、失恋を契機に」と喩にあった。

<主婦にもできる>と書かれているマニュアルは、一体どのような種類のものであろうか。
毎日主婦は、家畜の骨さえも断ち切るほど危険な刃物や、高カロリーの炎、「劇薬に付き取り扱い注意」とボトルに印刷されている薬剤を使いこなし、生活を維持しているのである。
多くの家庭でもそうであろうが、家電単純な修理、パソコンのトラブルなど、調整改修をわが家では私がしているのである。

職業として未組織労働者の「主婦」。職域組合で団結し、蹶起したらば一体どうなるのであろうか。

笑って遣り過したいが、そうも出来ぬ一首である