2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

髪の毛がいっぽん口にとびこんだだけで世界はこんなにも嫌  穂村弘

1月10日の日記にての歌と同じ、「短歌」12月号より。 穂村弘の短歌には、なるべく近寄らないように、気を付けているのだ。 近寄ってはいけない、危険だそう感じる。 この感覚、例えば麻薬を前にした感覚とは、違うと思う。 苺や季節のフルーツが沢山飾り付け…

たいかんするということのむずかしさ

今日の歌は、夏炉冬扇さんの歌集から引こうか、それともganimasaさんの歌集からと迷い、でもこれでは仲間ばかりが続くと思っていたところだった。 実家にて、毎日新聞の1月28日の短歌俳句欄を読む。

物はみな倒す潰すに打ち壊す家は優しく解くと言えり(ルビ・「解く」:「ほどく」)  西村とし

日本語とは、なんとも優しい言葉ではないか。 万物あらゆるものに神の宿る、その国に生まれたことを、この歌を読み幸いに思った。アメリカの高層ビルディングの爆破による解体を、テレビの画面で観ることがある。あっけ無く、一瞬で崩れ落ちる様を見るにつけ…

いえはほどく

急激なアクセス数の増加に、うろたえなかったと言うと、嘘になる 大いに狼狽したのだ。 弱小結社に所属する、無名のそれも子持の閑職者のブログである。 そんな私に、中学生の息子が「大丈夫だよ。Meikoなんて田舎のオバサン、みんな気にしてないから、すぐ…

明け初むる空に二十日を過ぎし月水銀色に横たわりおり  空 栞

結社誌12月号より夜明の空に、下弦の月であろう、横たわっているという。月が横たわる、そのような表現もあることを、作者より教えられた。 私も、月の歌の少ない方ではないが、このように月をとらえて、詠んだことはまだない。 「水銀色」も効いている。よ…

電飾に守られながら春浅き夕暮に一人乗る観覧車  野口和夫

今年度の歌壇賞の候補作に、所属結社の野口和夫が残り、「惜しかったよ」と友人から知らされる。歌壇二月号、急遽取り寄せねばなるまい。掲出歌は、2003年1月の結社誌の一首鑑賞にて、取り上げさせていただいたものである。【以下は、2003年1月号に掲載され…

のぐっちゃんおめでとう

歌友の近藤かすみさん(短歌人所属)のブログにても、風間博夫第一歌集「動かぬ画鋲」について取上げています。 「気まぐれ徒然かすみ草」です。このブログを始めるきっかけを作ってくださった方の一人です・・・御本人はお気付きではないのですが。 とても…

バルサの木ゆふべに抱きて帰らむに見知らぬ色の空におびゆる   小池光

まだ年若い友人と、先日電話で話しをしたときのことである。 友人は、小池光の作品に傾倒しており、随分多くの歌集を読んでいる。 そこで、小池光の短歌における抒情に話が移った。余計な抒情を削ぎ落とした、そのところに友人は惹かれているようだ。 「小池…

かぜたちて

只今、結社誌の作品評に取り掛かっているため、過去に書いたものでお茶を濁しています。 ちょっと今月は、苦しんでおります。 ストレス解消に、この日記のデザインを換えて遊んだりもしたが・・・もしその時、こちらに訪れてくださった方には、ごめんなさい…

「動かぬ画鋲」に散見する自然詠

歌集中、自然詠は冒頭部分だけでも 朝日受け寝台列車の運び来し雪のかたまり枕木に落つ アメンボの細長き脚ふんばれば水の面のわづかにへこむ 七月の水田の水の見えぬまで稲の高さのそろひて伸びる 霧深き山頂も立ちフラッシュをたけば光の白く広がる これら…

太陽系離れてゆかむボイジャーの母なる地球は淡き青き点(ルビ・「淡き青き点」:「ペール・ブルー・ドット」)  風間博夫

昨日付けの日記にて「記号を使い、ルビを多用して、実験的な試みも見られるが、成功しているかどうか、私としては不明である」と書いているのだが、寧ろ今は「ルビの多用」により、風間博夫は自作品の再構築をしているのではないかと思い出している。 下の文…

風間博夫第一歌集「動かぬ画鋲」を読む

非常に良質の、寄物陳思に貫かれるべき、一冊であろう 三部に分かれる構成となっているのだが、残念ながら最後の三部が、一首ごと屹立しづらくなっている 二部までは、表題にもなっている「完璧に壁を貫きしっかりと壁に食ひ込み動かぬ画鋲」の歌にみられる…

一回も仕事果たさず寿命来て捨つるもあらん火災報知器  風間博夫

風間博夫は1949年、昭和24年生まれである。藤原龍一郎より、学齢では2〜3年違うのだろう。 この年代の3年は、随分違うのではないだろうか。下に書く一文は、昨年の9月に何回かに分けて書いたものの、一部である。 今読み返すと、風間博夫の短歌に対して、思…

わたくしは夏の盛りのトタン屋根  櫂未知子

俳人の方が読んでいたなら、「季語を何と心得ておる。この一月に、この歌では云々」とお叱りと受けそうだ。 季語はもちろん「夏」であろう私は、俳句のことはよくわからない。俳句の同人誌のメンバーに入れていただいたり、その同人誌の先輩の俳人の方々に、…

砂白き磯につくばひ秋の日を大海原に手を浸し見る  窪田空穂

昨日付けの日記に「ある部分ではでは、歌が一方的な心情の発露の道具となり、鑑賞も批評も必要とされぬまま、浮遊する時代となってしまったのではないだろうか。」と書いたのだが 1930年(昭和五)に窪田空穂は「必要のもの不必要のもの」という短文を発表し…

日本脱出したし 皇帝ペンギンも皇帝ペンギン飼育係りも  塚本邦雄

昨年他界された、塚本邦雄の歌である。短歌を詠んでいなくとも、塚本邦雄の名を知っている方は、知識人の中に多いと思う。 しかしながら、知識人の前に「旧」の文字を冠せねばならぬ時代と、なってしまったのかもしれない。もう2〜3年前になろうか、短歌にお…

何もかも受身なりしと思ふとき机のまへに立ちあがりたり  柴生田稔

短歌の「虎の巻」というのか「アンチョコ」と呼ぶべきか、資料集を紛失してからのブログの出発で、歌がいつまで続くのか不安だったが、何とか続いている。柴生田稔は斎藤茂吉の直弟子であり、茂吉の研究でも有名な人である。 茂吉の長男である茂太氏御夫妻の…

携帯電話持たず終わらむ死んでからまで便利に呼び出されてたまるか  齊藤史

大変便利な時代になってしまった。 いつでも、どこでも、だれでも、電話をかけることができるのだ 手のひらの中に収まる、小さな機械で一応私も、携帯電話を持っている。友人や家族に、不携帯電話と評判は芳しくない 外出時、持ち歩かなくとも、困ったことは…

両の手を伸ばして夢に天降るヤコブの梯子掴まんとせり   澤善彦

結社誌の10月号に掲載された一首澤善彦は、嘗て外国船の船乗りであり、現在は画家として活躍をしている。 やはり晩学の人であり、齢も既に七十歳をいくつか過ぎているはず。 経歴のとおり、博識の人である「ヤコブの梯子」とは、≪雲の切れ間から、光が筋をな…

お知らせです

枡野浩一さんが、また一つ新しいことを始めたそうです ライブドアの携帯サイトで、 小説の連載を始めました。 題名は『短歌なふたり』。 新鋭歌人の佐々木あらら氏との合作で、 3カ月間、ほぼ毎日更新です(日曜日だけ休み)。 バックナンバーはいつでもま…

みちのくの母のいのちを一目みん一目みんとぞただいそぎける  斎藤茂吉

斎藤茂吉です。ええ、斎藤茂吉ですとも。 斎藤照子の夫で、斎藤茂太、北杜夫の父親です。勉強不足を解消すべく、中学二年生の国語教科書を紐解きましたところ、この歌です。 教科書ワーク、教科書対応テキストなどを参考に、この歌を鑑賞いたします。「みち…

玄関を開けたら一本背負いかな  丸山進

友人の川柳作家と話をしていると、「かなわないなぁ〜」と思うことが度々ある。 話の端々のウィット、そして観察眼。ときどき「その話いただき」と言われたとき。この丸山進の句を読んだとき、その「かなわないなぁ〜」が出たのであるアルバトロス―丸山進句…

ここよりは先へゆけないぼくのため左折してゆけ省線電車  福島泰樹

「バリケード・一九六六年二月」一連より 有名すぎるくらい有名な歌である先日、1月13日付で藤原龍一郎作品に触れたのだが、未消化の感が残っている 藤原龍一郎歌集は、何冊か持っており、それなりに読み込んでいるつもりであった 彼の作品・仕事振りを見て…

マニュアルに<主婦にもできる>といたわられ<にも>の淵より主婦蹶起せよ  島田修三

ネット内を探索していて、唐突にこの歌とぶつかってしまった 島田修三は、短歌雑誌などで写真を見かけるだけである。端正な面持ちの方と、印象がある。万葉学者としても、有名である。 騙し絵の咲き乱れたる地下街に降り立つ俺の騙されむとす ビーバップ聴き…

鼻歌をうたいながらにスキップに過ぎて行きしは「寅」にあらずや  豊嶋雅明

歌友、豊嶋雅明の歌である。結社誌の11月号に掲載された 「鼻歌をうたいながらスキップを踏んで通り過ぎたのは「寅」であろうか」一読、納得したのだ が、一瞬立ち止まり、再読をした 「寅」がスキップを踏む。それも、鼻歌をうたいながら と、と、とよしま…

とらがすきっぷで

今朝Faxが届く。 同じ結社に所属している方で、作品評を書くにあたって1月号の私の作品の「闘え」が口癖だった男来て薬の見本置きてゆきたり この歌から、若しや家業が薬局で、この男の方とはプロパーの方だったのか 赤土の地ぞどよめきて聞こえ来る闘えそし…

降る雨をすべて飲み込む巨大なる幻獣としてこの定型詩  藤原龍一郎

(眠たいので、この後はまた) (上の世代論、読み返してみると偏向しているような.....寝惚けていたので、後程書き直すかも)藤原龍一郎は定型の人である。十代の頃「藤原月彦」の名で俳句を発表し、既に注目をされている。 この歌も、俳句が中心の同人誌「…

端境期のひと

昨日の1月12日付け読売新聞の文化面に、永田和宏×永田紅の対談がある。 「団塊VS団塊ジュニア」の超・世代論がテーマであるらしい。 そこで、団塊世代は「新しいことが価値」であったが、団塊ジュニアは「短歌の本道で勝負しようという意識」と述べている部…

ほろびたる言語を恋えば霧多布の岬をたちまち濃霧が閉ざす   久々湊盈子

久々湊盈子の歌は、介護・厨・子供・家族等ジャンルが広い (一旦ここで休みます) 子供たちの冬休み中であるため、PCに向かっても落ち着かなく 家人が眠るのを待っていると、自分ももう眠たく、睡魔に勝てない そのような生活だから、尚更久々湊の短歌に惹…

檻の中を歩む孔雀は羽を拡げわれは人生を諦め難し  石田比呂志

石田比呂志第一歌集「無用の歌」の中の一首である。 出版時、石田は35歳、東京でキャバレーの支配人であった頃であろう。 夫人の山埜井喜美枝と共に、「未来」の会員だった頃である。 山埜井氏がNHK短歌の選者となったばかりの頃、某掲示板に「ぽっと出の田…