両の手を伸ばして夢に天降るヤコブの梯子掴まんとせり   澤善彦


結社誌の10月号に掲載された一首

澤善彦は、嘗て外国船の船乗りであり、現在は画家として活躍をしている。
やはり晩学の人であり、齢も既に七十歳をいくつか過ぎているはず。
経歴のとおり、博識の人である

ヤコブの梯子」とは、≪雲の切れ間から、光が筋をなして差し込む様子≫を西洋人は言うらしい。
聖書では、ヤコブが夢にて啓示を受けたことされえている。

「夢に天降るヤコブの梯子」を、「両の手を伸ばして掴まんと」しているという。
駆け登りたいヤコブの梯子、それは夢の中のものである。
澤善彦にとってのヤコブの梯子とは、一体なんなのであろう。


作者のもとに、天使が舞い降りたのだろうか。
梯子を、確りと掴み取ることは、出来たのであろうか。
儚くも悲しく、そして美しい一首である