2006-02-01から1ヶ月間の記事一覧

昼更けのモノレールにて忍び泣きしていし女を夜更けて思う    松岡 晧二

日常生活に使う交通手段の乗り物の中、忍び泣きしている女。 見るともなく、気付くともなく、遣り過してしまう。深夜一人になり、静寂の中、昼間の映像が蘇る。 公共の交通機関の中で「忍び泣き」をする女。 それは都会の中では、よくある情景の一齣である。…

溜池の石斛ほのかに匂うなり伸び立つ布袋葵の陰に        長尾もとね

今日も、古い結社誌から「石斛」を調べたところ、「いわぐすり」と読み〈せっかい〉のことなどと早とちりをしてしまった 一瞬なんのこっちゃと混乱したのだ。 溜池に石灰を撒いて一体どうするのだろうかと 若しや、水を浄化する効果でもあるのだろうか 物知…

自転車に乗りて彼岸の川岸を息子走りているやも知れず  有光智恵子

16日付のの作品も同様であるが、結社誌1月号より此岸と彼岸の間に、川が流れているという話を、私も聞いたことがある。 母親である作者はは此岸におり、 彼岸にいるご子息を思っている。 夭折であったのであろう、自転車に乗り走っているのであるから。 亡く…

鑑定無料密教占術の広告ぞああ空海を利用するとは  井上みつゑ

新生薑おろせば生薑香にたちて生薑でもなき泪出ずるも  有光智恵子

涙、涕、泪、「なみだ」と読ませる漢字は一つではない。 涕は、鼻からも流れ出る泣き方をした、そのようなときのもの。 涙と泪は表意文字か、表音文字の違いでしかなく、大意は同じと説明にあったが、 涙は流れ出るもので、泪は滲み出てくるように思うのは、…

菜の花の黄溢れたりゆふぐれの素焼きの壺に処女のからだに  水原紫苑  

そろそろスーパーマーケットの野菜コーナーの棚に、菜の花が並んでいても良いはずなのだが、今日は探したが無かった。 菜の花が大好きだ。 そう書くと、生け花だと大概の方は思われるだろう。 北の街では、菜の花を食する季節観は無く、いつもいつも菜の花の…

そらはまたするどき玻璃の粉を噴きてこの天窓のレースに降らす  宮沢賢治

宮沢賢治の大正七年〜八年に詠まれた歌宮沢賢治の歌が、詩に比して評価が低いことの原因に、「甘さ」を指摘している文献を読んだことがある。 一体誰の書いたものであったか、資料も手元に無いのだが。こうして、賢治の歌に触れ感じるのは、今の時代にこそ相…

にこやかに酒煮ることがつとめかわれにさびしき夕ぐれ  若山喜志子

好きな歌を一首。 牧水よりも、若山喜志子の方を好む歌人も、私の周辺には少なくはありません。己の消費可能電力を忘れ、ブレーカーが落ちてしまいました。 待機電力も必要であることも、計算に入れ明日あたりから、またゆっくりのんびりと続けます。2/21

お願い・理髪店のぐるぐる棒の出てくる歌を教えて下さい

昨日付の日記、どうしても気にかかって、仕方がありません ご存知の皆様 http://8504.teacup.com/harunobotamotiakinoohagi/bbs こちらのBBSまで、どうぞよろしくお願いいたします(2/18)

よるのそらふとあらはれてかなしきはとこやのみせのだんだらの棒  宮沢賢治

宮沢賢治の大正期の作品談風さんよりの、素敵なリクエスト 既視感のある歌であるが、資料によるとこの歌は、大正六年の作である それ以前の歌人の歌ではなく、現代短歌に詠まれている。その作品を思い出せません、どなたかヒントをお願いします 思考回路・記…

母親にあらがふ詭弁のスルドキをわが聴いてゐる参考までに  島田修三

あいあることばを探していたら、この歌とぶつかった。 「島田さん、また出会い頭の正面衝突ですよ」と言いたいのだが、作者とはまったく接点が無いので、何方かお知り合いの方がいたなら、お伝えください・・・って、本気にしないでね島田修三の歌には、愛が溢…

あいあることば

友人が菱川善夫氏の講演を聞き、感想の抜粋です タイトル あいあることば 『歌の海』という道新に連載された相聞歌のコラムから の抜粋と、現在も連載されている『物のある歌』からも 数首引かれて、話をして下さった。 菱川先生は文章のとおり、話し方も穏…

死んだ子を産まねばならぬ私は陣痛促進のため廊下を歩く  荒井直子

この歌を、今こうして取上げて、も良いのだろうかよ、逡巡した。まだ荒井直子第一歌集『はるじょおん』を手にして読んではいないのだ。 じっくり読んでみたい歌集のリストの、一冊の中に入れてはいるのだが。 荒井直子に関しては、塔短歌会に所属し、職業を…

草隠り鳴ける蛙の声低し鳴き止みたれば唯のくさむら  野口和夫

軽トラック一台分の人生を載せて息子が今日やってきた 気の抜けしビールも旨し他人には可愛くもなき子と暮らしつつ 以前「野口さんは、とほほの人である」と書いたことがあった。野口さんの「とほほ」は技である。天に昇ること無い「とほほ」を、地に落ちる…

とほほのひと

今日は、結社誌二月号に掲載された、十一月号の野口和夫の歌の作品評である

またひとつノブ毀ししを言ひきたる少年よ何に切なきならむ(ルビ・毀し:こはし) 黒木三千代

黒木三千代の第一歌集『貴妃の脂』より 幻の歌集と言われている、この歌集を持っていることを、ついつい自慢してしまう。 「あなたが、大きく影響を受けた歌人は」と問われたら、黒木三千代の名前を躊躇わずに挙げる。(誰も聞いてはくれぬのだが)親しくし…

銃口にジャスミンの花無雑作に挿して岩場を歩きゆく君   重信房子

ジャスミンを銃口に―重信房子歌集作者: 重信房子出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2005/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 3回この商品を含むブログ (12件) を見る元(なのだろうか、よくわからない)連合赤軍の女性闘士の重信房子が、2005月に歌集を出…

小綬鶏の鋭き鳴き声を一瞬に吸収したる杉木立はも(ルビ・鋭き:とき)  福田正弘

福田正弘第一歌集『無明の酒』の巻頭作品である。 題名の「無明の酒」は広辞苑によると「無明が人の本心をくらますことを酒にたとえていう語」とある。さらに「無明」は心理に暗いこと、一切の迷妄、煩悩の根源、三感の一とある。(作者後書より) 「牙」は…

やはらかきふるき日本の言葉もて原発かぞふひい、ふう、みい、よ  高野公彦

天泣―高野公彦歌集作者: 高野公彦出版社/メーカー: 短歌研究社発売日: 1996メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 高野公彦の歌に対するイメージは、雅やかさである。 ふかぶかとあげひばり容れ淡青(たんじょう)の空は暗きまで光の器 このよ…

酒のみてひとりしがなく食うししゃも尻から食われて痛いかししゃも  石田比呂志

歌集『滴滴』の中より石田比呂志全歌集作者: 石田比呂志出版社/メーカー: 砂子屋書房発売日: 2001/05メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (2件) を見る石田比呂志は、歌作の手の内を、簡単に見せる歌人である どのように推敲したのか、ポイ…

うそのなかにあるしんじつのはな

短歌に戻らせていただきます。 内田順子句集は、踏破するのに時間がかかりそうですコメント欄に、カオルさんの書いてらした「ししゃもの歌」

銀行の跡地はなんになるんだろう  内田順子

きっかけは、この句だった。川柳作家の友人から、合同句集が送られてきていた。 楽しみながら頁を繰っていたのだった。 何度も読み返すうちに、はじめのうちはそれほど気にならなかったのだが、掲出句が気になりだしたのだ。 そして、その作者の他の句にも..…

ここからは海となりゆく石狩の河口に立てば、立てば天啓  俵万智

1991年刊行の歌集『かぜのてのひら』の一首。かぜのてのひら (河出文庫)作者: 俵万智出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1994/05メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (5件) を見る会うまでの時間 自選歌集作者: 俵万智出版社/メーカー: 文…

泥のごとできそこないし豆腐投げ怒れる夜のまだ明けざらん  松下竜一

社会派作家の松下竜一は1968年に歌集『豆腐屋の四季』を自費出版している。 松下竜一の著書は、大杉栄と伊藤野枝の遺児・伊藤ルイズについて書かれた『ルイズ父に貰いし名は』を持っていた。 しかし、氏が歌人として活躍し、歌集が原作となりドラマ化された…