やはらかきふるき日本の言葉もて原発かぞふひい、ふう、みい、よ 高野公彦
- 作者: 高野公彦
- 出版社/メーカー: 短歌研究社
- 発売日: 1996
- メディア: 単行本
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高野公彦の歌に対するイメージは、雅やかさである。
ふかぶかとあげひばり容れ淡青(たんじょう)の空は暗きまで光の器
このように、鮮明にして細やかな表現がある。
掲出歌も「やわらかきふるき日本の言葉」にて「ひい、ふう、みい、よ」と数えているという。典雅な雰囲気を漂わせながら、地図の上を指差しているのだろうか、「原発」を。
「原子力発電所」と詠まず「原発」と表現し、この歌を昔からある童歌のフレーズのように穏かな調べ、だから尚更「怖さが」際立ってくる。
高らかにアジテーションせずとも、今自分のおかれている環境の不気味さを、感じさせられる歌である。
あと三首、典雅で怖い歌を引いておこう
我を生みし母の骨片冷えをらむとほき一墓下一壺中(いちぼかいちこちゅう)にて
天泣のひかる昼すぎ公園にベビーカーひとつありて人ゐず
いちじくの下かげ蒼し人は皆優しく待たれをりぬ柩に
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