電飾に守られながら春浅き夕暮に一人乗る観覧車  野口和夫

今年度の歌壇賞の候補作に、所属結社の野口和夫が残り、「惜しかったよ」と友人から知らされる。歌壇二月号、急遽取り寄せねばなるまい。

掲出歌は、2003年1月の結社誌の一首鑑賞にて、取り上げさせていただいたものである。

【以下は、2003年1月号に掲載されたものを、一部訂正した】

野口和夫は、トホホの人である。妻に逃げられ、子供を育てながらのバツいち生活。
その子供も、横浜への転勤により、妻のもとへと行ってしまった。
「悪い事ばかりじゃないさ、きっと良いことがあるよ」と、慰められる程本来ならば悲惨な状態なのだが、本人は穏かに笑っている。と表現してよいのか、のんびりとニコニコしているように見えるのだ。
学生時代のクラスには、必ず一人はいるタイプ。決して女の子からは「さん」付けでは呼ばれず、「のぐっちゃん」とか「ぐっち」と呼ばれる。そんな風が毎月の短歌からもうかがわれる。
夕暮れの観覧車に一人で乗って、絵になるタイプではないのだが、この作品においては、動画としての映像となる。
結社内には少ない「トホホ短歌」の詠み手である。
頑張れ、のぐっちゃん。

(これは、2002年の11月のことであり、今はご子息と共に生活をしているようである)